シャルモー(Chalumeau)
ソプラノ(ディスカント)シャルモー (after J. Denner ca.1700)
シャルモーはクラリネットの原型(モデル)となったシングル・リードの円筒型木管楽器です。
「17世紀には、シャルモー(chalumaeu)というフランス語は、バグパイプの指管(チャンター)や、一般的な意味での笛を指し、とうもろこしの茎に切り込みを入れてシングル・リードにしたリード・パイプなども含まれていた(アンソニー・ベインズ/ WOODWINDS INSTRUMENTS AND HISTORY by Anthony Baines)とのことです。
現在一般的に呼ぶところのシャルモーは、歴史的には17世紀末にシャルモー(キイが全く無い)に2つのキイを追加されたものを指します。
2つのキイは楽器の上部に対面して装着され、これらのキイを追加したことで、基音列と第3倍音列の間を繋げる(ブリッジ)ことが出来るようになり、12度のオーバーブロウイング(Overblowing)が可能となりました(ただ、このオーバーブロウィングは現代クラリネットと比べると大変難しいです)。
シャルモーの改良は、ドイツのニュルンベルクの楽器製作者のJ.C.デンナー(1655-1707)による功績として、J.C.ドッペルマイヤー(1677-1750)の著作、歴史年鑑「Historischen Nachricht von den Nürnbergischen Mathematicis und Künstlern」 (Nürnberg 1730) の中で、“シャルモーを改良したばかりでなく、クラリネットを発明した”との記述に見られる。ただ、当時ニュルンベルクで工房を開いていた他の職人によって発明された可能性も十分にあり、実際のところ誰により2つのキイがシャルモーに取り付けられ、又誰によりクラリネットが発明されたのかは確証がありません。
ただ、J.C.デンナーを含むニュルンベルク人の手により発 明されたと考えるのが妥当です。シャルモーの構造は、1枚リードをマウスピースに取り付けられるようになっています(写真の白い紐を巻いた裏側へ)。1枚リードを使用するのは現代クラリネットと同じですね。なお、マウスピースは現代クラリネットで言うところの樽(又バレル)部分と繋がっており、1つの胴体から成ります(写真/下部・右)。一般的にシャルモーの吹奏コントロールは大変難しいのですが、私にはクラリネットの故郷とも感じられる素朴な響きが残されているように感じます。
写真はソプラノ・シャルモー(ディスカント・シャルモー)で、長さは約30cm弱です。最近、市場では現代クラリネットのマウスピースを取り付け可能のシャルモーが流通していますが、歴史的観点から見る場合(古楽器演奏の立場から)、ご紹介させて戴いた様な楽器が真正なシャルモーということになります。なお、シャルモーの名前は現代クラリネットにおいては「シャルモー音域」としてその名を立派に(!)残しています。
よろしければ、シャルモー・ライブ演奏をお楽しみください。→古楽器の音