ヴェネツィアを訪れたのはバロック時代を生きた作曲家ヴィバルディ(A.Vivaldi 1678-1741)が活躍した街を歩いて見たいこと、それとヴィバルディが活動したというピエタ教会(Church of the Pieta-Sainta Mary)を訪れてみたい思いからだった。ドイツのミュンヘンをPM10:30頃の夜行列車で翌朝ベネチア・サンタルチア駅に到着すると驚いた。何と駅の真前には広々した運河が広がっているではないか!薄緑色の波のうねりを見ていると旅の疲れも忘れて期待感が出てくる。

その教会は運河の外れ、海に面したところにあった。この教会はピエタ孤児院としても用いられ、ヴィバルディはこの孤児院併設の音楽院の指導者、又教会では司祭を務めていたと言う。ピエタとは神からの哀れみや愛を表す意味があるそうだ。ここにはいわゆる「赤ちゃんポスト」があったことに感銘を受けた。ヴィバルディは愛をもって引き取られた子供達にここで音楽(楽器)指導をしていたそうだが、まさに無償の愛を実践していた。あの有名な「四季」もこの孤児院でヴィバルディから楽器を学んだ少女達が演奏したそうだ。中庭に恐る恐る入って行くと、元気に遊ぶ子供達の声が聞こえてきた。思い切って、中庭を抜けて行けば礼拝堂に入れるかも?と思ったが、東洋から訪れた一旅行者が入って行くには不自然に思い遠慮した。ただ、300年前に生きたヴィバルディが活動していた現場の雰囲気に少しでも浸ることが出来てそれだけで満足だった(1992.2訪問)。