古典クラリネット 6キイ inB管 オリジナル楽器
(ティボーヴィレ・フレーレ) Thibouville frères , Paris. (ca.1857)

 


本体はツゲ材(boxwood)、象牙リング(ivory)。
真鍮(brass)キイ、 A=435Hz

この楽器は私が手にした初めての古典クラリネットで、思い出深いものです。
1857年頃パリで製作されていますが、典型的な18世紀最後期から19世紀初頭の古典クラリネットの様式を持っています。当時パリでは科学アカデミーのピッチに関する会議で、A=435Hz(パリ・ピッチ)が採択(1859年)されていますから、この楽器は約2年程先駆けて採用していたことが伺えます。
この楽器でA=440Hzを採用しての演奏経験もありますが、やはりA=435Hzで演奏した時が一番自然で豊かな響きがします。古楽器演奏においてピッチの決定は重要な側面ですが、個々の楽器が持っている最も自然なピッチを知ることは、重要なポイントの一つです。
なお、この楽器のオリジナル・マウスピース(mouthpiece)は紛失されていたので、手元にはありません。
PS: 以下6枚の画像では、各パーツをご紹介させて戴きます。

 

下管(lower joint)をご紹介します。右側から4cmの所の象牙リングから左側の部分です。
なお、中央部(3つの指穴が並んだ部分)はミドル・ジョイント(middle joint)と呼ばれ、
取り外し可能な構造になっています。
多くの古典クラリネットがこのミドル・ジョイント部を持っています。

 

下管(lower joint)部分。 左側の筒状の部分にベル(bell)を接合します。
2本の長い真鍮製キイが付いていますが、上側のキイを押さえると、てこ の原理でキイの左先端に付いている円盤状の金具が下に降ろされ、トーンホールが塞がる仕組みになっています。なお、この金具には鹿皮が張り付けられています。

 

上管(upper joint)の表部分。 真鍮製キイは、左手・人差し指で押さえます。



 

 
上管の裏部分。 真鍮製キイは、左手親指で押さえます。6箇所に黒いシミの様な部分が見られますが、木(ツゲ材)の割れを防ぐ目的から、鉄製くさびが打ち込まれています。

 
ベル(bell)部分。 楽器ロゴマーク(Thibouville frères), B=inB♭管の意。

 
ベル(bell)部分。木目が美しいので、アップ表示します。実物の象牙リングのサイズは直径8.3mmです。